ゲームとしての考え方

朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに     吉野の里に 降れる白雪

まずは私の好きな歌を一首。
太陽が夜の帳を押し上げんとする頃、早起きした頭はいやに冴えているものです。質の良い睡眠は記憶の質を高め、交錯した思考にも論理的な解釈が与えられ、苦しかった悩みがちょっぴり楽になる事もあります。
新しい朝のプロローグが朝ぼらけ。白雪が、月と見まがうばかりに薄明かりを反射させて辺りを照らす。こんなことにハッと気づけるのも快眠のなせる業です。

朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに

上の句に注目しましょう。詠み人にとっても「朝ぼらけ」は印象的な時間帯です。ですから「朝ぼらけ」から始まる歌もたくさんあります。小倉百人一首には2首収録されてます。

朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに   現れ渡る 瀬々の網代木

これがもうひとつの朝ぼらけ。2つの歌はどちらも冬の朝の印象的な風景を詠んでいます。春はあけぼの、冬はつとめて。新しい朝は希望の朝です。希望をもって百人一首道を邁進しましょう。

カードゲームとしての百人一首では、下の句がひらがなで書かれています。言い換えれば表音文字で記録されていることになります。
これに対して、読み札に書かれた歌を声に出して読みあげる。ここで読み札の仮名混じり混交文の情報が音声情報に変換されます。
そうです、プレーヤーの耳に届くのは「ひらがな」。我々プレーヤーにとっての百人一首とは、ひらがなをヒントにしてひらがなを探すゲームなのです。

あさぼらけ ありあけのつきと みるまでに

というわけで「ゲーム」百人一首の歌はすべてひらがなで見ていくのが正解です。
ここで「朝ぼらけ」は「夜が明ける頃」という意味を離れ、「あ・さ・ぼ・ら・け」という5つの記号になります。

あさぼらけ あ...
あさぼらけ う...

ゲーム百人一首では、早く取り札を見つけて取れば勝ちです。しかしこの2首のように同じ音で始まる歌は、先頭の同じ部分が読み終わるまでは確定待ちの状態です。うっかり手を出せばお手つき!...仕方ありません。一つの勝負は「待ち状態」から解放される瞬間に動き出すことです。そのためにどこまで同じか?を覚えておく必要があります。全くはじめての方には申し訳ないのですが、はじめの数文字だけは暗記しなければなりません。
ある歌が「その歌と確定する」最少字数の文字を「決まり字」といいます。この決まり字は百人一首攻略の最低限です。上の2首でいえば、決まり字は「あさぼらけあ」「あさぼらけう」となります。

よしののさとに ふれるしらゆき

続いて下の句。下の句にも決まり字の戦略が当てはまります。2句を丸ごと探すより、できるだけ少ない文字数だけで探せたほうが速いです。
そして最小の情報で取り札全体を検索し、最小の情報で場所を覚えておくのです。先ほどの例でいえば「吉野の里に 降れる白雪」は「よし」まで見えれば決まりますし、「現れ渡る 瀬々の網代木」は「あら」でよいのです。

ここで注意したいのは、決まり字が6文字以上の場合です。取り札はひらがな3行で書かれていて、1行目は5文字です。先頭5文字が同じ下の句は、取り札の右側1列が同じなので一見すると似ています。こうした組み合わせが3つありますので、きちんと区別して把握する必要があります。

あさぼらけ ありあけのつきと みるまでに   よしののさとに ふれるしらゆき

こうして上の句の決まり字から下の句を、下の句の決まり字から上の句を連想できるようになれば様々なタイプの百人一首ゲームで楽しむことができると思います。


⇒決まり字

⇒百人一首 トップページ